LIFE

「LIFE」油彩F10号(2013年4月)

自宅から徒歩15分の通勤路。毎朝、古びた団地の合間を縫って職場へと向かう。高度成長期の居住地計画によって生まれた鉄筋コンクリートの団地は、当時画期的だったはずだが、今では見る影もない。まだ薄暗い早朝のシャッター街を歩いていると、魚屋の水槽に目がとまった。虚ろな眼をして漂う鯛の向こうに、のろのろと開店準備をする老いた店主の姿を見た。これから刺身になるであろう鯛と、この団地の老朽化とともに終焉にむかう老人の背中に、僕は強い衝撃を覚えた。黒い柱やフレームは、境界を隔てて日常を垣間見る効果を生むとともに、死を暗示している。死というフレームを通して世界を切り取るとき、生の営みが高揚して見えてくるのは、なぜだろう。僕は何度も現場に足を運んでスケッチを繰り返し、時々、鯛を買って帰り、見たり描いたり、煮たり焼いたりして、結局、最後はそれを食べた。
「LIFE(生)」って、どこか哀しい。

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