ちよじ

「裸婦」鉛筆デッサン(2015年1月)

どこか少女っぽさを残す顔立ちに、すらりと長い手足、白い肌に入った印象的な青いタトゥー。太陽・月・星たち・と、それらを見上げる一匹の黒猫…。通称「クロネコ」の名で知られるこの美しいモデルは、最も魅力的なモデルの一人であり、これまでの僕の裸婦デッサンの中で最も多く登場する人物である。
記憶を辿ればクロネコさんとの出会いは、2014年5月にまで遡る。某所で行われたクロッキー会に登場した彼女は、セーラー服で登場したので、高校生だと思って描いていたら、ポーズの途中でやおら脱ぎだし、タトゥーの入った白い裸身で現れたときには、職務上のコンプライアンス(服務規律)に抵触しないかハラハラしたものだ。しかし実際には立派な大人であり、思慮分別や礼儀をわきまえた、しっかりした面も持ちあわせている。
名古屋ROJUEのアトリエで、彼女を描いていると、必ずと言っていいくらい描きはじめから最後まで、後ろにきて熱心に僕の絵を鑑賞してくれる。モデルであると同時に一番の鑑賞者でいてくれるのだ。その垣根のない人なつこい性格にどれだけ励まされただろう。絵描きのおぢさん達は皆、彼女に萌え萌えなのである。
表題の「ちよじ」とは、大学時代、愛読していた、つげ義春の漫画のいくつかの作品に登場する少女である。おかっぱ髪に着物に下駄をはいた、猫目のちよじ。そして「むげいの家のお父っつあは、きぐしねくて、やんだ、おら。」なんて北国なまりで言う。大人になる前の少女特有のエロスをたたえながら、貧しくつらい境遇を淡々と生きていく、そんなちよじの姿に青年期の僕は淡い恋心を抱いたものだ。
このデッサンを描いた日、クロネコさんは髪を切ったばかりだった。ショートボブになったクロネコさんを描きながら、昔恋したちよじを思い出したのであった。

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