Parody

「Parody」鉛筆デッサン(2017年3月)

はるばる九州から来てくれたこのモデルは、快活で利発、まわりを元気にしてくれる明るさがある。ポージングも独特で、長時間肘を上げ続けるキツいポーズを自ら好んでとる。このプライドと根性は、九州女子の特産物と言えよう。人気のモデルであるため、この日も人で溢れかえっていた。僕は、前面の好位置をキープしていたのだが、モデルまでの距離が遠過ぎることと、あまりの混雑に辟易してしまったため、大人しく諦めてひと気の少ない背面から描くことにした。するとそこに奇妙な既視感があることに気づいた。「奴隷市場…!」と僕は心の中でつぶやいた。
ジャン・レオン・ジェローム(1824~1904)はオリエンタリズムの影響が濃厚なフランスのアカデミズムの画家である。「ローマの奴隷市場」に代表される一連の絵画は、奴隷(裸婦)の背景に競売でせりをする男たちが描かれている。裸婦はたいてい背面から描かれるか、肘を高くあげて顔を隠しており、その匿名性によって辱めを受ける「肉体」が強調され、卑猥ともとれるエロティシズムが横溢する。
僕が流れついた引越し先から見える構図は、その「奴隷市場」のそれと酷似していたのである。しかしジェロームの描く悪意に満ちた世界とは異なり、どこか拍子抜けするような光景…。モデルは苦痛に耐え、何か必死に美を体現しているが、描き手のオヤジ達はまるで温泉帰りのようなグダグダさ加減…。よく煮込んだおでんのようになっている。「パロディ(parody)」とはまさにこのことであり、僕はモデルとオヤジ達の織り成す、めくるめく世界を描きたいと思った。

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