卑近なホラーショウ

2016 バスルーム

僕は今、築39年の木造住宅に住んでいる。この家を買った時、すでに家屋には値段がつけられておらず、外壁と内装の部分的な施工後は、自分でリフォームしながら気ままに暮らしてきたのだ。

クロス張りにした壁面にフローリングの床にあつらえたが、昭和後期の遺産である僕の家は、どこか懐かしい造りになっていて、特に風呂場は、設備工だったという前の家主のこだわりが感じられる。今ではもうあまり見られなくなった丸石を埋め込んだ洗い場にタイル張りの壁とホーローの浴槽。天井は、珪藻土が粗く塗りこめられており、光の加減でマチエールにできる影が微妙に変化して面白い。僕がこの家の中で気に入っている数少ないスポットの一つだ。

風呂桶は、長野県の安曇野市で個展を開いた時、作品を搬入中の中央高速道路のサービスエリアで買ったものだ。半透明な蛍光イエローの風呂桶で、プラスチックでできている。桶は厚みがあって深く、底には「ケロリ」と赤い文字が印刷されている。昔、両親に連れられて入った銭湯でよく見たデザインに一目惚れして買ったのだ。決して使いやすい風呂桶とは言えないが、一度風呂場に置いてみると、この桶はこの風呂場のために作られたのではないかと思う程似つかわしい。

 

2016年冬。デッサンに夢中になり画題を探していた僕は、毎日風呂場を通りすぎるうちに、面白いことに気づいた。ある角度から入る光の加減によって、風呂場に鎮座する風呂桶の光と影の抑揚が消失し、幻のような感じになっているではないか(!)ホーローの浴槽は黒々して、何か不気味な感じがする。そうだ!ここを描いてみよう!…そんな気持ちになったのだ。さらに・・・!何より創作意欲をかきたてたのは、柔毛のような吸水力の高いバスマット。この手の複雑さは、かえって僕の情熱をくすぐってやまない。ひとつひとつ、丁寧に描ききったら楽しいだろうな、とワクワクしてしまう。このモチーフの触覚は、描き方によっては何か生理的嫌悪感を引き出すような怪しいフォルムをしている。

バスマットの上に配置したスリッパは、最初、

 

 

 

 

 

 

こう置いて描いていた。僕は、風呂場に入る時、こうやってスリッパを置く。しかしこのように置いて、足を入れる部分がこちらを向いていると、絵の構成上、どうしてもしっくりこないので、思い切って逆に置いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。こんな感じに・・・。その瞬間、僕は「はッ」とした。これだ!これってすごく怖い。このように置かれるスリッパの主は、本来バスルームににいるはずだが、暗闇の中に人影はなく、幻のような風呂桶が怪しく光っている。内臓の繊毛を思わせるバスマットが体内への入り口だとしたら、風呂桶はさしずめ子宮にあたるのだろう。僕のイマジネーションはどんどん広がり、子宮に見立てた桶に並々と水をはり、シャワーヘッドを沈めた。シャワーホースは「へその緒」だ。そのへその緒が繋がっているであろう胎児の実体は暗闇の奥にあって決して見ることができない!このようにして僕は、卑近な日常に見るホラーショウを描いたのだ。見る人がそんな風に見てくれるとは決して思わないが。(笑)

いいんだっ!(^^♪…僕の絵は、日記みたいなものだから(笑)

部分

 

 

 

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