芸大を卒業する、君たちへ。④

1990~1991 無題

・・・ご無沙汰しておりました。今、長久手文化の家で開催されているNAF(ながくてアートフェスティバル2018)の準備~搬入のため、ブログの執筆が遅れたことをお詫びします。お近くにお越しの際にはぜひお立ち寄り下さい。NAFの展示については、また後日、紹介させていただく予定です。・・・

 

さて、前回のブログでは、アーチストは自己の内発性を源泉として作品を創り出すが、それで全てが完結するわけではなく、美術館やギャラリーなど、人の目にふれる場に作品が展示されて初めて、アートとして成立しうることについてふれた。また、そうしたアート全体の成り立ちの中で、社会には、アーチストが扱うことのできない残り半分を請け負う専門家がいること、さらにその専門家たちとどのように関わっていくかでアーチストの生き方のタイプが見えてくることについてふれた。今回は、その続きを話そう。

 

この現代社会において、アートをひとくくりで定義することが難しくなってきている要因のひとつとして、多様化していく現代人の個性や価値観に応じて、アートのジャンル(分野・領域)が拡大したことがある。たとえば、自分の芸大時代、メディア系アートは、まだまだ芽生えたばかりの新ジャンルで馴染みが薄かったが、テクノロジーの進歩に伴い、今やあちこちで目にすることができるようになった。CGアニメやプロジェクションマッピングなどは、その最たる例と言えよう。また、今もってなおスマートフォンやSNSの開発によってコミュニケーションの在り方が大きく様変わりしているし、AI(人工知能)の進化に伴い、これまでに見たこともないような、新しいアートが出現する日も、そんなに遠くないことだろう。このような状況の中で、アーチストの活動形態も多種多様な様相を呈している。アーチストは今や個人で活動するに留まらず、グループで活動する者、美術団体に所属する者、はたまた、ごく最近では、ユニットを組んで共同制作したり、ジャンルの異なるアート間でコラボレーションしたりするなどの活動がみられる。

今やアートは、我々の日常生活に当たり前のように溶けこんでいる。街道を歩けばモニュメンタルな彫刻作品があるし、公共施設のロビーには、サークル活動で描かれた印象派風絵画が並び、カフェのギャラリースぺ―スにはモダンな抽象絵画、過疎地では、集客効果をみこしたアートイベント。大規模な文化の祭典であるビエンナーレやトリエンナーレなども展開している・・・。新旧入り乱れた時代様式に、異文化の融合。アカデミックなものからインディペンデントなものまで、あるいは、ビジネスライクなものからピュアなものまで・・・。現代のアートはまさにカオス(混沌)と言っても過言ではないだろう。

 

しかしこのような混沌とした状況にもよらず、アーチストとその活動の場における社会的な構造に着目するならば、そこに一定の分類をすることができる。以下、それについて解説してみよう。

 

◎ STAGE:1 「アマチュア」

<サークル型>

水彩画や手芸など同好の士が集まり、市町村の生涯学習センターなどの公共施設を借りて行う趣味的な文化活動。

<教室型>

カルチャーセンターなどがプロの講師を招いて開催する教室に参加する活動。趣味や余暇活動の延長から「もう少し本格的に学びたい」という意識をもつ参加者が多い。

 

◎ STAGE:2 「市民活動家」

<市民展型>

地方公共団体が主催する市民美術展のように一般公募によって出品を募り、展示、審査、表彰などを行う。

<テーマ型>

財団法人や地方公共団体などがテーマを設定し、公募を行う。企業の宣伝やイメージアップなどの利益をねらうものもあるが、中には意識の高い市民団体がNPO法人を立ち上げ、芸術的純度の高い公募を行うケースもある。

 

◎ STAGE:3 「プロフェッショナル」

<画壇型>

美術協会や会員制団体への所属による組織的な活動形態。美術団体ごとに作風の傾向があり、組織的活動の面で厳格でピラミッド型のヒエラルキー(階級制)が存在するが、組織内での評価を得て昇格し、帰属的安定感や一定の優遇を得ることができる。

<提携型>

ギャラリーでの発表を通して、ギャラリストとアーチストが提携を結び、二人三脚のような関係をとる。ギャラリストは、所属アーチストの企画展を開催してギャラリーを無償で提供する一方、作品が売れた場合はマージンを得るなどして共存戦略をとる。

 

◎ STAGE:4 「アートプロジェクト」

<場所主体型>

アートプロデューサーが主催し、地域の風土や歴史性などの「場の特性」に着目したコンセプトを立ち上げ、アーチストを招請して行うアートプロジェクト。

<作家主体型>

アートプロデューサーが主催し、アーチストの特性や、アーチストが制作する作品成立の必要条件から条件設定し、立ち上がるプロジェクト。

 

◎ その他:「インターネット」

<ギャラリー型>

SNS、ブログ、ホームページなどを通した発表や情報交換を通して作られるコミュニティ。閲覧数が増えてくると収益が発生するなど、プロ・アマ混在したネットワークが特徴。

<オークション型>

ネットオークションによる作品の売買を中心とした活動。

 

 

以上、大きく4つに分類したほか、その他として近年見過ごせないインターネットを通した活動を加えてみたが、いかがだろうか?芸大を卒業する君たちにとって、このような視点は、あるいは、ナンセンス極まりないものと感じるかもしれない。しかし、少なくともそれについて知っておくことは、芸大卒業後の混乱を回避する一助となることだろう。

例えば、芸大を卒業する時点で、一般企業への就職を考えるならば、STAGE:1の「アマチュア」やSTAGE:2の「市民活動家」のようなスタンスでアートと関わっていくのも良いだろうし、もしプロでやっていくことを志望するのならば、画壇に所属するか、あるいはフリーランスでギャラリーと提携していく道があることを知っておく必要がある。また、STAGE:4の「アートプロジェクト」は、知名度の低いかけだしのアーチストでも参加しやすいものから、敷居が高く参加したくても、そうやすやすとは参加できない高尚なものまであるが、いずれにしてもこれは、ある程度人脈ができてこないことには参加が難しいものであるように思われる。

 

次回は、STAGE:3「プロフェッショナル」の提携型を例として取り上げながら、美術館やギャラリーなどの働きについてさらに考察を深めていこうと思う。

 

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