瘤木川

1989 瘤木川

本ブログも今回で100回目となる。でも、まあ、だから何かあるというわけではないが。(笑)アニバーサリーのくくりで考えるなら1000回まで続いていたら何か面白いことやってみようと思う。長文にもかかわらず、いつも根気よく読んで下さる読者の方々、ありがとうございます。

 

この作品は、非常になつかしい作品で、僕が芸大1年生の20歳の時刷った木版画である。

僕の実家は小高い丘のてっぺんにあって、坂道を下って南へ10分くらい歩いたところに瘤木川(こぶきがわ)がある。川幅は10メートルもないくらいで、最近は多少きれいになったが、昔は陶器工場の排水が流れ込み、いつも白く濁っていた。川というよりはドブに近い水路で、いつも化学臭が鼻についた。

僕はこの場所が好きだった。

小学生の頃は、同じクラスの友達の実家が駄菓子屋を営んでいて、足繁く通って遊んだ思い出がある。川沿いの狭い道を歩くと古い木造の陶器工場が立ち並んでいて、昔は時々煙突が煙を吐き出していた。瀬戸の煙突は独特で、耐火煉瓦を積み上げた円柱形の煙突の周囲を鉄製のフレームで囲い、その上端から四方へワイヤーを張って支持していた。僕はそんな煙突を眺めて歩くことが楽しくて、よく犬を連れて遠くまで散歩したものだ。そんな煙突も、今ではもうすっかり見かけなくなった。環境への配慮から規制が強化されただけでなく、生産ラインそのものが労働単価の安い中国や東南アジアに渡り、陶器工場はひとつまたひとつと姿を消していった。街は少しずつ綺麗になっていくが、僕は面白くなかった。

この作品は、そんな僕の心象風景である。薄汚れた陶器工場が空高く煙を吐き、黒々とした渦巻きを描いている。僕にとって工場は、創作を生み出す象徴的なモチーフなのだ。

 

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