里山へ行く

2018 .11.19 里山サテライト

NAFで再会した友人が、瀬戸市の「海上(かいしょ)の森」の里山サテライトで田んぼの管理をしているというので、今日はそこへ遊びに行ってきた。

 

海上の森は、2005年に行われた愛知万博の会場候補地だったが、オオタカの営巣が確認されたことから生態系保護のため開発を中止した経緯があり、いまだ豊かな森林が保たれている区域である。里山サテライトは、一般車両の立ち入り規制がかかる山の中腹にある。

僕は友人の許可を得て、許可証がわりにハザードランプを点滅させながら、時速20kmほどの低速で坂道を昇り、友人の田んぼへ向かった。道は舗装されているものの、車一台通るのがやっとの狭さで、もし徒歩で向かったら30分以上はかかるであろう距離のところにあった。薄暗い山道を抜けると、突如視界が開け、トトロがいそうな昔懐かしい里山が広がっていた。

 

待ち合わせの時間より30分も早く着いてしまった僕は、近くの山小屋の脇に車を停め、周囲を散策してみた。すると廃材をパッチワークのように組み上げて作ったと思われる農作業用の小屋を発見。しかもよく見ればわたり廊下で大小二つの小屋が連結してあり、どうかしたら普通に人が暮らせそうな感じもある。僕はこの類のバラック感のある小屋を見るとワクワクしてしまう。スケッチは、友人を待つ間の数分の間に描き上げたものである。他にも、石材の切り崩しを組み上げて作った石垣に古い児童用の椅子があった。このシチュエーションにもキュンとなってしまう。

 

しばらくして、スケッチが一枚できあがるころ、友人が到着した。僕たちはさっそく田んぼに向かった。芸大卒の彼女は、絵を描くことよりも料理を作ることに創造性を見出したそうで、卒業後イタリア料理を学んだという。さらに里山サテライトの公募に企画が通り、田んぼを開設するに至ったのだが、その企画というのが非常にユニークで、「農村部の田んぼの水質や生態系が良好に育まれていけば、水脈を通じて海に流れ込む水も浄化され、良質なアサリが獲れるようになるだろう。わたしはいつかそのアサリを使って美味しいリゾットを作ってみたい。」という、胸をすくような壮大な夢にあふれたものだった。田んぼを育てることひとつにしても、その向き合い方に芸大生らしい視点があって、僕は嬉しくなった。

 

田を巡りながら、水路を引く話やそこに集まる生き物たちの話、水を浄化させるマコモタケの話など聞くことができた。“はざ”と呼ばれる木組みに干された稲は、平地であればスズメがたかってくるはずだが、この森には猛禽類がたくさんいるので、ここにはスズメはいないそうだ。そんな話ひとつにしても、生態系のサイクルが間近に感じられて面白い。草刈りからはじめて田んぼを開墾していくことは、並大抵の労力ではないはずだが、友人は生き生きと楽しそうに話してくれた。自然と関わる中に豊かな創造性が引き出されていく感覚があり、里山は思いのほかエキサイティングな場所なのだ。

 

散策がてら砂防池に行くと、冬場に入る前に池の水が抜かれていて、思いのほかシュールな世界が広がっていた。夏の間、池に水没していた枯れ木は、水面を境界に苔を生やしている。

今思えば、なぜ全景の写真を撮っておかなかったのだろうと悔やまれるが、それはまたの機会に・・・。池周辺の泥地には、イノシシ、タヌキ、カモシカなどの足跡があり、友人はそれを一つ一つ教えてくれた。

 

散策を終えると友人は、僕のために物置小屋に仮設した竃でカレーうどんを作ってくれた。僕たちはそれから数時間、日が暮れて肌寒くなるまで、げらげら笑いながら、とりとめもない話をして過ごした。そして最後に竃に残った炭火でミカンを焼いて食べると小屋を片付け解散した。炭火にいぶされたミカンは、ちょっとスモーキーで大人の甘さがあった。

里山は楽しいところだ。今度また、天気のいい日にスケッチに行こうと思う。

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